「上海で部屋を探すことになったけれど、何から見ればいいのか分からない」。最初はみなさんそうだと思います。ネットで調べても出てくるのはエリアの紹介ばかりで、実際に決めるまでの流れはなかなか見つかりません。
この記事では、上海歴20年のあいだに5回引っ越して、毎回10軒くらい見てきた経験から、部屋が決まるまでの5ステップと、住み始めてから起きることをまとめました。エリアの紹介はしません。書くのは、内見で何を見るか・契約で何を確認するか・設備が壊れたときに誰へ言うか、です。
読み終えるころには、内見に行く前に用意しておくものと、当日に見る順番が決まっているはずです。

何軒も見比べてきましたが、最後の決め手にしていたのは間取りではありませんでした。何を見ていたかは、STEP3でお話しします🐼
① 結論|上海の家探しは「エリア→物件→契約」。エリアは半分もう決まっている
上海の住まい探しは、大きく分けると「エリアを決める → 物件のタイプを決める → 内見して契約する」という流れで進みます。順番にすると5つのステップです。
ただ、いちばん最初に驚くのはここだと思います。エリアは、探し始める前から半分くらい決まっています。自分の好みで自由に選べる範囲は、思っているより狭いんです😊
①-1 20年で5回、毎回10軒くらい見て決めてきました
まず、この記事がどういう経験から書かれているかをお伝えしておきます。
上海に住んで20年のあいだに、引っ越しは5回しました。1回あたり、だいたい10軒くらい見て決めています。物件探しはすべて自分でやりました。会社に任せることもできたのですが、任せると希望を聞かれないまま決まってしまうことがあるので、こだわりがある人は自分で動いたほうが納得できます。
言葉の問題はあります。それでも自分で動いたのは、家賃を抑えたかったからです。中国系の仲介会社は日系より費用を抑えやすく、そのぶん中国語でのやり取りが増えます。ここは後半(STEP4)で詳しく書きます。
①-2 なぜ「エリアは半分もう決まっている」のか
理由は2つです。
① 会社が出してくれる家賃の枠に上限があるから。枠を超える物件は、そもそも候補から外れます。
② 子どもの学校の送迎バスのルートがあるから。家族で来ている場合、ここが実質的にエリアを決めます。
この2つで、選べる範囲がぐっと絞られます。残り半分は、物件そのもので決まります。だからこの記事は、エリアの紹介ではなく「その先」を厚く書きます。
①-3 この記事が担当する範囲
①-4 まとめ
・エリアは会社の家賃の枠と、子どもの学校で半分決まる
・自分で決められるのは残り半分。そこは物件と、大家さんで決まる
・だからこの記事は、エリアの紹介ではなく「決めるまで」と「住んでから」を書く
② STEP1 エリア|会社・学校・通勤から逆算する
最初のステップはエリアですが、ここは時間をかけるところではありません。むしろ「自分が決められる部分はどこか」を先に見極めて、さっさと次へ進んだほうが、いい部屋に出会えます。
②-1 エリアを決めているのは、実は自分ではない
これまでの引っ越しのうち、2回は自分の希望以外の理由で場所が変わりました。
1回目は、契約更新のときに家賃を上げられて、会社の予算をオーバーしてしまったからです。同じ場所に住み続けられなくなって、家賃の安いエリアを探し直しました。
2回目は、子どもの日本人小学校のお迎えバスのルートの関係です。バスが通るエリアでないと、毎日の送り迎えが親の負担になります。このときは予算をオーバーしていたのですが、超えた分を一部自己負担にすることを会社と相談して、高いほうの物件に移りました。
つまり、エリアを実際に動かしていたのは家賃の枠と、学校のバスでした。自分の「この街が好き」は、正直あまり出番がありません😅
②-2 探し始める前に、手元に置いておく3つ
物件を見に行く前に、この3つを確認しておくと迷いません。
① 家賃の上限額(会社の規定。超えた分をどうするかも含めて)
② 子どもの通学手段(スクールバスのルート・徒歩圏かどうか)
③ 通勤の経路(配偶者の勤務先がある場合も含めて)
この3つが決まると、候補エリアは自然に2〜3個まで絞れます。そこから先が、この記事の本題です。
②-3 エリアの中身は、こちらにまとめています
どのエリアがどんな雰囲気か、学校・病院・買い物からどう逆算するかは、家族帯同のガイドで詳しく書いています。
👉 上海駐在に家族帯同|ビザ・学校・医療・生活立ち上げ完全ガイド
また、「その家から会社まで実際にどう移動するのか」は交通の記事が参考になります。通勤の現実的な所要時間は、地図の距離より移動手段で決まります。
👉 上海の交通は3つで足りる|配車アプリ・地下鉄・タクシーの使い分け
②-4 まとめ
・エリア選びは時間をかけない。決められる範囲が最初から狭いため
・実際にエリアを動かすのは「家賃の上限」と「学校のバスのルート」
・見に行く前に、①家賃の上限 ②通学手段 ③通勤経路 の3つを手元に置く
③ STEP2 物件のタイプ|サービスアパート・ローカル高層・一戸建ての違い
エリアが絞れたら、次は物件のタイプです。ここは日本にはない選択肢が出てくるので、先に整理しておくと内見がラクになります。
③-1 3つのタイプの違い
| 項目 | サービスアパート | ローカルの高層マンション | 一戸建て(郊外の住宅区) |
|---|---|---|---|
| 家具・家電 | 付いている | 付いていることが多い | 物件による |
| 契約の相手 | 運営会社 | 個人の大家さん | 個人の大家さん |
| 困ったときの窓口 | 受付・フロント | 大家さん or 管理室 | 大家さん or 管理室 |
| 向いている人 | 着任直後・短期・単身 | いちばん一般的。家族も単身も | 子どもが小さい・庭がほしい |
| 手間 | 少ない | 大家さんとのやり取りが必要 | 同じ+管理する範囲が広い |
③-2 実際に住んだのは2つ。いちばん一般的なのはローカルの高層マンションです
上海の駐在員が住む物件で、いちばん多いのはローカルの高層マンションです。日本人向けに作られた特別な物件ではなく、中国の人も普通に住んでいるマンションの一室を借りる形になります。
サービスアパートは、着任した直後や、単身で短期間だけ、といった場面で選びました。受付があって、困ったときに日本語や英語が通じることもあるので、立ち上げの時期は気持ちがラクです。そのぶん家賃は高めになります。
わが家では、家賃の値上げで会社の予算をオーバーしたときに、より安いローカルの高層マンションへ移りました。「グレードを上げていく」ばかりではなく、下げる方向の引っ越しもあるのが現実です。
③-3 日本と決定的に違うのは「家具も家電も付いてくる」こと
これは最初に驚くところだと思います。上海の賃貸は、家具と電化製品が備え付けなのが基本です。ベッド・ソファ・ダイニングテーブル・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・テレビ。多くはすでに部屋に入っています。
引っ越しのたびに家具を買わなくていいので、これはとても助かります。ただし裏返すと、部屋を選ぶことが、家具と家電を選ぶことでもあるということです。
・気に入った間取りでも、備え付けの家電が古いと、住んでから困ることがあります
・逆に、少し狭くても家電が新しい部屋は、住み心地が上がります
・内見のときは、間取りだけでなく エアコン・冷蔵庫・洗濯機・給湯 の見た目の年季も見ておく
古い設備は、住んでから壊れます。これは避けられません。壊れたときにどうなるかは、後半(住んでから起きること)で書きます。
③-4 単身か、家族帯同かで優先順位が入れ替わります
同じ上海でも、単身の方と家族で来ている方では、見るところが変わります。
家族で来ている場合は、セキュリティが第一です。多少家賃が高くても、入口の管理がしっかりしているところを選んだほうが安心できます。それと、同じマンションに日本人のご家族が住んでいると、心強さがまったく違います。何かあったときに聞ける人が近くにいる、というのは想像以上に大きいです。
単身の場合は、優先順位を思い切って変えていいと思います。多少狭くても、エレベーターがなくても、部屋が綺麗で家具や家電が新しいほうが、日々の満足度は高くなります。
③-5 まとめ
・いちばん一般的なのはローカルの高層マンション。サービスアパートは立ち上げ期に向く
・家具・家電は備え付け。部屋を選ぶ=家具と家電を選ぶこと
・家族帯同はセキュリティ優先、単身は綺麗さと設備の新しさ優先
④ STEP3 内見|写真では分からない4つのポイント
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。内見(看房/カンファン/Kànfáng)で何を見るかは、検索してもあまり出てきません。私はこれまで何十軒と見てきましたが、見ているのは間取りではありませんでした。
④-1 内見に行く前に|昔は飛び込み、いまはアプリで絞れます
上海に来たばかりのころは、仲介会社の店舗に飛び込みで行っていました。ガラスに物件の紙が貼ってあって、それを見て「これ見せてください」とお願いする、という探し方です。
いまは事情が変わりました。物件を扱うアプリやサイトが増えていて、行く前にある程度まで絞り込めます。上海市政府が公開している日本語の案内ページには、賃貸情報の入手先として 5i5j・中原地産・自如(Ziroom)・上海鏈家(Lianjia)・房天下(Fang.com)・安居客(ANJUKE) といったサービスの名前が挙げられています。手続き関係では「随申辦(Suishenban)」のミニプログラムやアプリも案内されています(2026年9月時点)。
ただし、アプリで絞り込めるのは候補までです。写真は綺麗に撮られているので、実物とはよく違います。だから何軒も見ることになります。ここから先の4つは、写真では分かりません。
④-2 ポイント1|綺麗さ。汚い部屋は、その場でやめます
私が内見で「これは無理だ」と判断する理由は、いつも同じです。汚いことです。
間取りが良くても、家賃が予算内でも、部屋が汚れていたらその場で候補から外します。掃除で取り返せる汚れと、そうでない汚れがあるからです。水回りの黒ずみやにおいは、入居後の掃除ではなかなか消えません。
ここで大事なのは、築年数と綺麗さは別物だということです。上海の部屋は20年でかなり綺麗になりました。日本と同じか、それ以上と感じる部屋もあります。理想を言えば築年数の新しい物件ですが、市内であれば古い建物でもリフォームが進んでいて、おしゃれで綺麗な部屋がたくさんあります。
・築年数で切り捨てない。見るのは「いま綺麗かどうか」
・リフォーム済みの古い建物は、新築より条件が良いことがある
・迷ったら「多少狭くても、綺麗で新しいほう」を選ぶ。住めば都です
④-3 ポイント2|階数。できれば7階より上を選びます
写真ではまず分からないのが階数の影響です。私は1階などの低層階は選びません。理由は3つあります。
① 道路や広場の音が入ってくる
② 蚊が入ってくる
③ ゴキブリが出やすい
同じマンション・同じ間取りでも、階が違うだけで住み心地が変わります。個人的には7階より上なら安心できる、という感覚を持っています。
④-4 ポイント3|時間帯。同じ部屋に、違う時間でもう一度行く
写真や間取り図では分からないものを並べると、こうなります。
音・におい・水回りの状態・日当たり・エレベーターの混み具合・周りに住んでいる人・近くの工事。
正直に言うと、私はこれを全部、住んでから知りました😅 昼間に見た静かな部屋が、夜になると外がにぎやかだった。日当たりが良いと思ったら、午後は隣の建物の影に入っていた。そういうことが起きます。
対策は単純で、時間帯を変えて、同じ部屋に何回か見に行くことです。ただし、これには限界もあります。何度も足を運べる物件ばかりではありませんし、決断を待ってもらえないこともあります。
・2回行けるなら「昼」と「夜」で1回ずつ
・1回しか行けないなら、生活の中心になる時間帯に合わせる(在宅が多いなら昼、帰宅が遅いなら夜)
・行けないときは、窓を開けて外の音を聞く・水を出してみる・エレベーターを待ってみる。この3つだけでも情報が増えます
④-5 ポイント4|大家さん。いちばん見ているのは、部屋ではありません
4つ目が、いちばんお伝えしたいところです。
私が「ここにしよう」と決めるときに見ているのは、大家さん(中国語では房东/ファンドン/Fángdōng)に余裕があるかどうかです。
なぜかというと、部屋を気に入って契約しても、1年後の更新のときに家賃を上げられたら、また引っ越すことになるからです。そして引っ越しは、本当に手間がかかります。荷物だけの話ではなく、住居の登記もやり直しになりますし、子どもの生活も動きます。

部屋は2時間で決められますが、大家さんとの関係は2年続きます。20年やってきて、いちばん効いたのはここでした🐼
もうひとつ理由があります。住んでから設備が壊れたとき、直してくれるかどうかも大家さん次第だからです。この話は次の章(住んでから起きること)で詳しく書きます。
見るポイントは、こんなところです。
① 質問への答えが返ってくるのが早いか
② 値段の話をしたときに、あわてないか
③ 部屋の手入れにお金をかけている様子があるか(設備が新しい・掃除がされている)
④-6 まとめ
4つのうち、最初の3つは内見のその日に効くものです。最後のひとつだけは違っていて、住み始めてから、じわじわ効いてきます。
物件は、見ればだいたい分かります。分からないのは人のほうです。だから何軒も見るのは、部屋を比べるためというより、「この人となら2年やっていけそうか」を比べるためでもありました。
・内見はその日で終わらない。決めた相手との付き合いは、契約期間ぶん続く
・写真で分かるのは間取りだけ。残りは、行ってみないと分からない
・迷ったら、条件のいい部屋より「話が通じる大家さんの部屋」を選ぶ
⑤ STEP4 家賃と条件|会社負担の枠内でどう決めるか
物件の候補が絞れたら、次はお金の話です。ここは駐在ならではの事情があって、「いくらの部屋を選ぶか」ではなく「枠の中でどう決めるか」になります。
⑤-1 枠は「上限」というかたちで来ます
多くの日系企業では、家賃は会社が負担してくれます。ただし、たいてい上限額が決まっています。この上限が、そのままエリアと物件のグレードを決めることになります。
そして、2024年から2026年にかけては、福利厚生を見直す会社が増えています。上限を超えた分が自己負担になるケースもあるので、赴任前に「上限はいくらか」「超えたらどうなるか」の2点は確認しておいたほうがいいです。
金額の相場そのものは、この記事では扱いません。エリア別の家賃の目安や、駐在家庭の予算全体は、物価の記事にまとめてあります。
👉 上海の物価事情|駐在員家族4人の予算リアル
⑤-2 値上げは断れません。だから「最初の交渉」で次の更新を織り込みます
ここが日本といちばん違うところかもしれません。
上海では、契約の更新時に家賃を上げられても、こちらから断ることが難しいです。日本のように「今の条件のまま更新してください」と主張するのは現実的ではなく、上がった家賃が会社の枠を超えてしまえば、引っ越すしかなくなります。
わが家は実際にそれで1回引っ越しました。そして引っ越しは、想像より手間がかかります。荷物を運ぶだけでなく、住居の登記もやり直しになりますし、家族の生活も一度リセットされます。
だから、いま私が大事だと思っているのはこれです。
最初の値段交渉のときに、「次の更新で上がること」を先に織り込んでおく。
・会社の枠ぎりぎりの家賃で契約しない(上がりしろの余白を残しておく)
・更新のときに条件がどうなるのかを、契約前に仲介会社へ聞いておく
・「いま払える額」ではなく「1年後も枠に収まるか」で判断する
⑤-3 发票(ファーピャオ)を家賃に含めるかは、交渉のときに決めます
これは毎回もめるところなので、先にお伝えしておきます。
中国には发票(ファーピャオ/Fāpiào)という、正式な領収書にあたる書類があります。会社に家賃を精算してもらうときに、この发票の提出を求められることがあります(会社の規定によります)。
ところが、发票を発行する側にはコストの負担が生じるため、大家さんが発行を嫌がることがあります。私はこれで毎回のようにやり取りをしてきました。
⑤-4 枠を超えるときは、相談できることもあります
「いい物件が見つかったけれど、会社の枠を超えている」。これは実際によくあります。
わが家では、子どもの学校の送迎バスのルートの都合で、枠を超える物件を選んだことがあります。このときは、超えた分を一部自分で負担する形で会社と相談して、認めてもらえました。
もちろん、会社の規定によります。ただ、「枠を超えているから無理だ」と自分で結論を出す前に、理由をつけて相談してみる価値はあります。特に子どもの通学や、家族の安全に関わる理由は、説明しやすい部類だと思います。
⑤-5 中国系の仲介か、日系か
もうひとつ、費用に効いてくるのが仲介会社の選び方です。
私は中国系の仲介(中介/ジョンジエ/Zhōngjiè)を使ってきました。理由は、費用を抑えられるからです。そのかわり、やり取りは基本的に中国語になります。
日系の不動産会社なら、日本語で相談できて、契約書の日本語版も希望すれば用意してもらえます。そのぶん費用は高くなります。
・費用を抑えたい/中国語でのやり取りに抵抗がない → 中国系の仲介
・言葉に不安がある/初めての赴任で判断材料がほしい → 日系の不動産会社
・どちらでも「仲介を通すこと」は変えない(理由は次の章に書きます)
⑤-6 まとめ
・家賃は「上限」というかたちで来る。上限額と、超えたときの扱いを赴任前に確認する
・値上げは断れない。枠ぎりぎりで契約せず、次の更新まで見越して交渉する
・发票が必要かどうかは、値段交渉と同じタイミングで話す
・枠を超えるときも、理由があるなら相談してみる価値はある
⑥ STEP5 契約|大家・仲介・登記で確認すること
部屋が決まったら契約です。ここで押さえておきたいことが4つあります。
⑥-1 契約書は中国語だけ。いまはスマホで撮って読ませられます
賃貸の契約書は、基本的に中国語のみです。日系の不動産会社にお願いすれば、希望すれば日本語版を用意してくれることもありますが、中国系の仲介だと中国語の契約書1本になります。
昔はここが本当に大変でした。でも、いまはAIがあります。契約書をスマホで撮って、そのまま画像を読ませれば、何が書いてあるかはかなり分かるようになりました。「読めないから諦める」という時代ではなくなっています。
紙の書類を撮ってAIに読ませる手順は、姉妹ブログでまとめています。写り込んだ個人情報の消し方も一緒に書いてあります👇
👉 Claude Codeに画像を見せて指示する方法|スクショ1枚で伝わる3つの場面
⑥-2 仲介は必ず入れてもらいます
大家さんと直接やり取りしたほうが安く済むのでは、と思うかもしれません。私の考えは逆です。契約のときは、必ず仲介を入れてもらったほうがいいです。
理由はひとつで、もめたときに間に立ってくれる人がいるからです。条件の食い違い、修理の負担、退去のときの精算。こういう場面で、当事者どうしだけで話すと感情の問題になりがちです。仲介手数料は、そのために払っていると考えています。
(住み始めてからの連絡は少し話が変わります。それは次の章で書きます)
⑥-3 押金(ヤージン)と前払い
契約時にまとまったお金が動きます。上海市政府が公開している日本語の案内では、「家賃の3ヶ月分と敷金1ヶ月分を前払いするのが一般的」と説明されています(出典:上海市人民政府「上海国際サービス|不動産賃貸」japanese.shanghai.gov.cn/2026年9月時点)。中国語では敷金にあたるお金を押金(ヤージン/Yājīn)といいます。
なお、押金が退去のときにどうなるかは、次の章で書きます。ここは結論から言うと、心配しなくて大丈夫でした。
⑥-4 契約したら、24時間以内に住居登記
契約が済んだら、すぐにやることがあります。住居の登記です。
中国では、外国人がホテル以外の住まいに滞在する場合、到着後24時間以内に登記をするルールになっています(2026年9月時点)。上海市政府の案内でも、契約後にパスポートと契約書などを持って最寄りの派出所で登録する、と説明されています。
手続きの具体的なやり方(いまはスマホで完結すること、必要な書類、遅れたときのこと)は、赴任初日の記事にまとめてあります。
👉 上海赴任 初日 やることリスト|入国カードデジタル化・24時間登記まで完全ガイド
⚠️ 引っ越すたびに、この登記はやり直しになります。STEP4で「引っ越しは手間がかかる」と書いたのは、こういうところも含めての話です。
⑥-5 まとめ
・契約書は中国語のみが基本。撮ってAIに読ませれば下調べはできる(最終確認は人にお願いする)
・仲介は必ず入れる。もめたときに間に立ってくれる人への費用と考える
・押金と前払いの条件は契約書で確認する。会社手配なら任せて大丈夫なことが多い
・契約したら24時間以内に住居登記。引っ越すたびにやり直しになる
⑦ 住んでから起きること|設備の故障・退去時のこと
家探しの記事は、たいてい契約したところで終わります。でも、生活はそこから始まります。ここからは、住み始めてから実際に起きたことを書きます。
⑦-1 だいたい、何かは壊れます
はっきり言ってしまうと、上海の部屋では、住んでいるうちに何かが壊れます。
わが家で実際に起きたのは、エアコン・給湯まわり・水回り、それと電気が切れること。備え付けの家電は前の入居者も使っていたものなので、寿命が近いこともあります。
ここで思い出してほしいのが、STEP2で書いた「家具も家電も備え付け」という話です。備え付けということは、その設備は自分の持ち物ではありません。壊れたときにどうするかも、そこから決まってきます。
⑦-2 連絡先は「大家さんに直接」がいちばん早い
契約のときは仲介を必ず入れる、と前の章で書きました。住み始めてからは、少し話が変わります。
本来は仲介会社に連絡するのが筋です。ただ、実際にやってみると間に人が増えるほど時間がかかります。私は契約が終わったあとは、大家さんに直接連絡するようにしていました。大家さんが物业(ウーイエ/Wùyè)——マンションの管理室にあたるところ——に連絡して、修理の段取りをつけてくれます。
慣れてからは、自分から管理室に直接お願いすることもありました。
・契約まで=仲介を必ず入れる(条件の食い違いを防ぐため)
・住んでから=大家さんに直接連絡する(間の人を減らすと早い)
・大家さんが管理室(物业)へ手配してくれる。慣れたら自分から管理室へでもよい
⑦-3 費用は大家さん。当たり前のこととして請求していい
これは遠慮しなくて大丈夫です。備え付けの設備が壊れた場合、費用は大家さんの負担が基本です。自分の持ち物ではないので、当然といえば当然なんですよね。
日本の感覚だと「言いにくいな」と感じるかもしれません。でも、こちらでは当たり前のこととして、はっきり伝えたほうが話が早いです。申し訳なさそうに切り出すより、「エアコンが効かないので見てもらえますか」と事実だけを伝えるほうが、結果的にスムーズでした。
⚠️ もちろん、こちらの使い方が原因で壊した場合は別です。また、契約書に負担の取り決めが書かれていることもあるので、契約のときに一度目を通しておくと安心です。
⑦-4 20年で、放置されたことは一度もありません
修理をお願いして「対応してもらえなかった」という経験は、20年で一度もありません。
ただ、これは運が良かっただけではないと思っています。STEP3で「大家さんに余裕があるかを見る」と書きましたが、そこで選んでいるから、住んでから困らなかったという面が大きいです。
⑦-5 退去のとき|押金は戻ります。面倒なのは水道光熱費のほう
最後に、出ていくときの話です。ここは日本と違うところがあります。
押金(敷金)は戻ってきます。私の場合、毎回きちんと返ってきました。差し引かれないように、会社の担当の方から交渉してもらうとスムーズです。現地の人どうしで話してもらったほうが、話が早く進みます。
原状回復も、基本的には求められませんでした。日本のように「壁紙を張り替えて」といったやり取りは、私の経験ではありませんでした。
いちばん面倒だったのは、意外なところです。水道光熱費の精算でした。退去日で日割りにするので、その計算と支払いのやり取りが発生します。ここも、会社の担当の方にお願いできるならお願いしてしまうのが早いです。
・押金は戻る。引かれないよう、交渉は現地の人にお願いするとスムーズ
・原状回復は基本的に求められない(日本の感覚とは違う)
・いちばん面倒なのは水道光熱費の日割り精算。ここは人に頼っていい
⑦-6 明日からできる3つ
長くなったので、明日からできることを3つだけ置いておきます。印刷でもスクリーンショットでも、持って行きやすい形にしました。
□ ① 会社に2つ聞く
「家賃の上限はいくらか」「上限を超えたらどうなるか」。この2つで、探す範囲が決まります。
□ ② 内見は、同じ部屋に2回行く
時間帯を変えて行きます。1回しか行けないときは、窓を開けて音を聞く・水を出す・エレベーターを待つ。この3つだけでも分かることが増えます。
□ ③ 大家さんに、質問を1つしてみる
答えが返ってくる速さと、値段の話をしたときの反応を見ます。2年つき合う相手を選んでいる、と思って見てください。
赴任全体の流れ(内示から生活の立ち上げまで)を先に把握しておきたい方は、こちらもどうぞ。
👉 上海駐在 完全ガイド|赴任準備〜生活立ち上げの6ステップ

20年のあいだ引っ越しを繰り返して思うのは、完璧な部屋には出会えないということでした。それでも、綺麗な部屋と、話の通じる大家さんを選べば、だいたいなんとかなります。住めば都、です🐼
⑧ よくある質問(FAQ)
- Q会社が物件を決めてしまう場合、希望は出せますか?
- A
会社の規定によりますが、伝えるだけでも変わります。わが家は毎回、自分で探しました。任せると希望を聞かれないまま決まってしまうことがあるためです。とはいえ、契約や支払いを会社がやってくれるのはラクな面でもあります。「エリアと階数だけは希望を出す」というように、部分的に伝えるのが現実的だと思います。
- Q中国語ができなくても、自分で探せますか?
- A
探せます。日系の不動産会社なら日本語で相談でき、契約書の日本語版も用意してもらえることがあります(費用は高めです)。中国系の仲介は費用を抑えられますが、やり取りは中国語になります。最初に「日本語の契約書を用意してもらえるか」を聞いておくと、どちらにするかの判断が早くなります。
- Q家具や家電は自分で買う必要がありますか?
- A
基本的には不要です。上海の賃貸は備え付けが一般的で、ベッド・ソファ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機は付いていることが多いです。そのぶん、内見では設備の年季も見ておいてください。生活費全体の目安は上海の物価事情|駐在員家族4人の予算リアルにまとめています。
- Q契約の途中で家賃を上げられたら、断れますか?
- A
更新のタイミングで上げられた場合、断るのは難しいのが実情です(2026年9月時点)。わが家はそれで1回引っ越しました。引っ越すと住居の登記もやり直しになりますので、その手間も含めて、最初の交渉で枠ぎりぎりにしないことをおすすめします。
- Qエアコンが壊れたら、まず誰に連絡すればいいですか?
- A
契約後であれば、大家さんに直接連絡するのがいちばん早いです。大家さんが管理室(物业)に手配してくれます。費用は大家さんの負担が基本です。備え付けの設備は大家さんの持ち物だからです。本来は仲介会社に連絡するのが筋ですが、住み始めてからは直接のほうが動きが早いというのが実感です。
