上海への赴任が決まって、ご家族での帯同を決めた。住まいも学校も、なんとか目処がついた。——ここまで来て、ふと気づくことがあります。
夫が、家にいない。
平日の夜は会食、週末はゴルフ。悪気があるわけでも、家族を大事にしていないわけでもありません。それでも現実として、家にいる時間はかなり少なくなります。そして残された時間を回すのは、帯同ご家族(いわゆる駐在妻)の役割になります。
この記事では、その状態を前提にして生活を組み立てる方法を5つの段取りに分けてお話しします。書いているのは、上海歴20年の、いなかった側の人間です。当時わが家がどう回らなくなって、何をしたら回りはじめたのか。恥ずかしい部分も含めて、そのまま書きます。
読み終えるころには、夫の予定を待たずに来週の予定を決められる状態になっているはずです。

先に結論だけ言っておくと、うちは「夫はいない」と決めてしまってからのほうが、家族みんな楽になりました。待つのをやめたんです🐼
① 結論|「夫がいない前提」で組んだほうが、家族は楽になります
①-1 まず結論|「帰ってくるかもしれない」をやめると、生活が動きはじめます
上海に家族で赴任すると、しばらくは「今日は早く帰れそう?」という会話から一日が始まります。夫の帰宅時間に合わせて夕食の時間を決めて、週末の予定も「たぶん空いていると思う」という前提で組む。ごく自然なことだと思います。
ただ、これがいちばん消耗します。
理由はシンプルで、予定が「相手の都合」でしか決まらないからです。空いているかもしれない、空いていないかもしれない。その状態が続くと、待つ側は自分の一日を最後まで確定できません。しかも上海に来たばかりの時期は、まだ知り合いも行き先も少ないので、予定が流れたときの受け皿がありません。
わが家がうまく回りはじめたのは、順番を逆にしてからでした。夫がいない日を先に置いて、そこに家族の予定を入れていく。空いていた日は、おまけとして一緒に過ごす。そう組み替えただけで、家の中の空気がずいぶん変わりました。
「夫の予定を待って埋める」から「夫がいない前提で埋めて、空いたら一緒に過ごす」へ。
もちろん、これで全部が解決したとは言えません。ただ、家族が上海で自分の生活を持てるようになると、赴任した本人も仕事に集中しやすくなります。わが家に関しては、そういう良い循環になったと考えています(数字で測ったわけではないので、断定はできません)。
①-2 5つの段取りの全体像
この記事では、その組み立て方を5つの段取りに分けてお話しします。どれも特別なことではなくて、順番に手をつけていくだけのものです。
順番にも意味があります。①〜②は赴任してすぐの時期に効いてくるもの、③〜④は赴任してからずっと効いてくるもの、⑤は年に2回だけれど毎回しんどいもの、という並びです。
①-3 この記事で扱わないこと|ビザ・住まい・学校は別記事にまとめました
先にお断りしておくと、この記事では手続きの話をしません。帯同ビザ、住まい探し、お子さんの学校選び、医療と保険——このあたりは、それだけで1本ぶんの分量になります。
手続きの全体像(ビザ→住まい→学校→医療→生活立ち上げ)は、こちらにまとめています。
▶ 上海駐在に家族帯同|ビザ・学校・医療・生活立ち上げ完全ガイド【2026】
この記事が扱うのは、その手続きが全部終わったあとに残る「時間」のほうです。住む場所が決まって、学校も決まって、それでも平日の夜と週末が空いている。そこをどうするか、という話をします。
② なぜ夫は家にいないのか|会社の付き合いは断れないという構造
②-1 平日の夜は週2回。多いときは週4回、出張者が来ればその期間は毎日
まず、数字の話をします。私の場合、平日の夜の会食は週2回くらいが平常運転でした。多い時期は週4回。そして日本から出張者が来ると、その滞在期間中はほぼ毎日になります。
出張者対応は、来る前から日程が決まっているぶん、まだ読めます。読めないのは、前日や当日に決まる会食のほうです。「明日の夜、一緒にどうですか」と言われて、断る理由が特に無い——そういう誘われ方をします。
ここでお伝えしたいのは「夫が飲み歩いている」という話ではなく、回数が読めないということのほうです。
週2回なら、残りの3日は家にいられる計算になります。ところが実際には「今週は何回になるかわからない」状態が毎週続きます。待つ側からすると、これがいちばん予定を組みにくいのです。
②-2 週末は月2回前後のゴルフ
週末についても書いておきます。ゴルフが月2回前後ありました。
上海に限らず、中国での仕事はゴルフの比重が大きめです。しかも半日では終わりません。朝早く出て、夕方に帰ってくる。土曜か日曜のどちらかが、そのまま1日消えます。
月2回ということは、月に4回ある週末のうち、半分は片方の日が埋まっているということになります。「週末は家族の時間」という前提は、この時点でだいぶ怪しくなります。
②-3 なぜ断れないのか|日本と違って、人間関係が限定的だから
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
お客様からの誘いは断れません。上司からの誘いも、基本的には断れません。 これは日本でも同じでは、と思われるかもしれませんが、海外の駐在先では事情が少し違います。
理由は、人間関係が限定的だからです。
・日本の本社なら、同じ部署に何人も担当がいて、関係先も分散しています
・上海の現地法人は人数が少なく、一人ひとりが受け持つ相手が決まっています
・つまり「代わりに行ってもらう」も「別の人と組み直す」も、選択肢として無いことが多いのです
・その結果、断ったことがそのまま通常業務に響きます
日本にいたころは「今日はちょっと」と一度断っても、次の機会がありました。上海では、その「次の機会」を作る相手がそもそも限られています。だから断らない、というより、断るという選択肢が最初から手元に無い、という感覚に近いです。
これは、赴任した本人の性格の問題ではありません。現地法人という組織の形から来る、構造の問題です。ここを「夫のやる気の問題」として扱うと、家庭の中で話が進まなくなります。逆に「そういう仕組みなんだ」と一度置いてしまえば、次に考えることは「では、どう組むか」に変わります。
②-4 私の失敗|予定は伝えていました。でも、それだけでした
正直に書きます。ここは私の失敗の話です。
予定が入ったときは、わかった時点で妻に伝えていました。行けなくなった週末は謝っていましたし、埋め合わせのつもりで別の日に出かけたこともあります。自分としては、やるべきことはやっているつもりでした。

当時のぼくは「連絡はちゃんとしている」で止まっていました。でも妻が困っていたのは、ぼくが来られないことそのものより、ぼくが来られない時間をどう使うかが決まっていないことだったんですよね😔
伝えていたのは私の予定だけで、その空いた時間に家族が何をするかという段取りは、何も渡していませんでした。連絡はしている。謝ってもいる。でも、妻から見れば「今週も夫はいない」という事実が残るだけです。
いま振り返ると、必要だったのは埋め合わせではなく、夫がいてもいなくても回る形を、赴任してすぐの時期に一緒に作っておくことでした。これから赴任される方には、そこを先に片づけてほしいと思っています。
この章の持ち帰り
・平日の夜は週2〜4回、出張者が来れば連日。週末はゴルフが月2回前後
・断れないのは性格ではなく、現地法人の人間関係が限定的だという構造のため
・だから「謝る」ではなく「いない前提の段取りを渡す」ほうへ切り替える
③ 段取り1|友人をつくる(最初の3ヶ月で決まります)
③-1 上海で「友人ができなかった人」を、ほとんど見たことがありません
帯同ご家族の話題になると、まず出てくるのが「知り合いができるかどうか不安」という声です。上海に来る前のご家族から、いちばんよく聞く心配ごとかもしれません。
ただ、上海で20年見てきた実感を正直に書くと——友人ができなかった方を、ほとんど見たことがありません。
理由は、上海の日本人コミュニティにはたいてい世話を焼いてくれる方がいるからです。新しく来た人がいると聞けば、声をかけて、店を教えて、病院を教えて、次の集まりに連れて行ってくれる。そういう方が、どのコミュニティにも一人はいます。
ひとつだけ条件があります。相性を選ばなければ、という条件です。
「気の合う人と出会えるか」で考えると、これは運の要素が大きくなります。でも「困ったときに聞ける相手がいるか」で考えるなら、上海ではほぼ確実に見つかります。最初の数ヶ月に必要なのは後者のほうです。気の合う相手は、そのあとゆっくり探せばいいと思っています。
だからこの段取りは「友人ができるかどうか」の話ではなくて、「いつ入るか」の話です。
③-2 入口は3つ|日本人学校の保護者・習い事・古北のコミュニティ
わが家の場合、妻のつながりは次の3つから広がりました。特別なルートではなくて、上海に住んでいれば自然に前を通る場所ばかりです。
| 入口 | きっかけになりやすい場面 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 日本人学校の保護者 | 送り迎え・行事・クラスの連絡 | お子さんがいるご家庭。いちばん入りやすい入口です |
| 習い事の教室 | 週1回、同じ顔ぶれで顔を合わせる | お子さんがいない方・自分の時間から始めたい方 |
| 古北のコミュニティ | 買い物・食事・地域の集まり | 日本人が多い地区に住む方。情報が集まりやすい場所です |
上海の日本人が多く住む地区は長寧区の古北(グーベイ/Gǔběi)あたりで、日本の食材が買えるお店も、日本人学校も、習い事の教室も、この周辺にまとまっています。住む場所を決めた時点で、この3つの入口の近さもだいたい決まるということでもあります。
⚠️ ここで大事なのは、3つ全部に手を出さないことです。どれか1つで構いません。週に1回、決まった曜日に人と会う場所が1つあるだけで、生活の手ざわりはずいぶん変わります。
③-3 なぜ3ヶ月なのか|「来たばかり」のレア感が効いている期間だから
では、なぜ「最初の3ヶ月」なのでしょうか。
これは、来たばかりの人には希少価値があるからです。
上海に長く住んでいる人ほど、新しく来た方には教えたくなります。どのスーパーに日本の醤油があるか、どの病院に日本語が通じる先生がいるか——長く住んでいれば当たり前になったことが、来たばかりの人にとっては全部が知りたい情報です。教える側にとっても、それは気持ちのいい役割なんですよね。
この「教えたい・世話を焼きたい」という気持ちが、いちばん強く向くのが最初の数ヶ月です。半年、1年と経つと、周りから見て「もう慣れた人」に変わります。慣れた人には、誰もわざわざ声をかけません。悪気があるわけではなくて、必要がなくなるだけです。

これ、逆の立場になるとよくわかります。ぼく自身も、新しく赴任してきた方には「あの店いいですよ」と言いたくなります。でも1年住んでいる方には、まず言いません🐼
③-4 年の初め・年度の初めは、輪ができる前に入る
もう1つ、タイミングの話をしておきます。
上海の日本人社会は、年の初め(1月)と年度の初め(4月)に人が大きく入れ替わります。赴任も帰任もこの時期に集中するからです。そして新しく来た方が多い時期には、その人たちの間で新しい輪ができます。
ここがポイントで、輪はできてしまうと、あとから入るのが少し難しくなります。すでに共通の話題ができていて、予定も回りはじめているからです。入れないわけではありませんが、最初から一緒だった人と同じ距離になるまでには時間がかかります。
この3ヶ月のあいだに、何が起きているか
・来たばかりの時期は、周りが自然と世話を焼いてくれる期間です
・1月・4月は新しく来る方が多く、そこで新しい輪ができます
・輪ができる前に入っておくと、そのあとがずっと楽になります
・逆に半年ほど様子を見てから動くと、同じ人間関係を作るのに何倍か時間がかかります
赴任してすぐは、荷解きも手続きもあって落ち着かない時期です。それでも、人に会う予定だけは先に入れておく。これがこの記事の1つ目の段取りです。
家族帯同そのものの準備(ビザ・住まい・学校・医療)は、こちらにまとめています。
▶ 上海駐在に家族帯同|ビザ・学校・医療・生活立ち上げ完全ガイド【2026】
④ 段取り2|習い事を始める(中国語は「完璧」より初速)
④-1 妻が実際にやっていたもの
2つ目の段取りは、習い事です。友人づくりと近いところにありますが、こちらは自分の時間割を作るという意味合いが強くなります。
参考までに、妻が上海で実際にやっていたものを並べてみます。
妻がやっていたもの
・ヨガ
・中国結び(中国の伝統的な飾り紐の手工芸です)
・中国語
・バドミントン
・テニス
・カラー診断
・お茶
・料理教室
・旅行
並べてみると、われながら多いなと思います。もちろん全部を同時にやっていたわけではなくて、何年かのうちに入れ替わっていったものです。合わなければやめて、また別のものを始める。その繰り返しでした。
ここでお伝えしたいのは、中国語だけが選択肢ではないということです。「まず語学から」と考える方は多いのですが、体を動かすものでも、手を動かすものでも構いません。むしろ言葉があまり要らないもののほうが、来てすぐの時期には始めやすいと思います。バドミントンやテニスは、中国語がまったく話せなくても成立します。
④-2 中国語は「完璧」を目指さない|通じた1回が生活を変えます
とはいえ、中国語もぜひ入れてほしいものの1つです。ただし、目標の置き方を変えたほうがうまくいきます。
上手に話せるようになろうとすると、たいてい続きません。教材を開く時間が取れない日が続いて、そのまま止まってしまう。よくある流れです。
そうではなくて、タクシーで行き先が通じたとか、お店で「これください」が言えたとか、そういう小さな1回を早く作るほうが効きます。1回でも通じると、次に外へ出るときの気持ちがまるで変わります。逆に、完璧を目指して家から出ない時間が続くと、上海の街そのものが遠くなっていきます。
いまはオンラインで受けられるスクールもあるので、教室に通う時間が取りにくい方でも始めやすくなりました。選び方はこちらにまとめています。
▶ 中国語オンラインスクールおすすめ3選【2026年版】上海駐在員が比較
④-3 自分の予定が入ると、生活のほうが先に回りはじめます
習い事をおすすめする理由は、実は語学や趣味そのものではありません。カレンダーに自分の予定が入るからです。
夫の帰宅時間に合わせて動いていると、その日の予定は最後まで決まりません。ところが「火曜の午前はヨガ」「木曜の午後は中国語」と決まっていると、その週はこちらを軸に組み立てられます。夫が帰ってこられるかどうかは、その後で考えればいいことになります。
この章の持ち帰り
・習い事は語学に限りません。体を動かすもの・手を動かすものから入っても大丈夫です
・中国語は「上手になる」より「1回通じる」を先に取りにいくほうが続きます
・いちばんの効果は、自分の予定が先に決まること。待つ側から抜け出せます
⑤ 段取り3|家の中の時間の質を上げる
⑤-1 当時は、日本のテレビが見られませんでした
3つ目の段取りは、家の中の時間です。
外に出る予定を作る話を2つ続けてきましたが、上海では外に出られない日がそれなりにあります。雨の日、真夏の暑さ、冬の寒さ、それに小さなお子さんの体調。乳幼児がいるご家庭だと、そもそも外出そのものがひと仕事です。夫がいない平日の夜と週末に、家の中で過ごす時間はどうしても長くなります。
わが家が上海に来たころ、この時間がいちばん重たかったです。日本のテレビ番組が見られませんでした。
当時どうしていたかというと、日本の家族に録画したものやDVDを送ってもらっていました。送ってもらって、届くまで待って、見て、また次を頼む。いま書くとずいぶん手間のかかる話ですが、当時はそれが普通でした。届いた日は、ちょっとした行事のような感じでしたね。
⑤-2 いまは、家の中の時間の作り方が変わりました
この20年で、いちばん変わったのがここだと思っています。
いまは日本の番組も映画も、上海の自宅で見られます。録画を送ってもらう必要はありませんし、届くのを待つ時間もありません。家の中の時間の質は、当時とは比べものにならないくらい上げやすくなりました。
ただし、海外から日本のサービスを使うときは、サービスごとに海外での扱いが違います。日本国内向けにしか配信していないもの、海外でも見られるもの、条件つきのもの——このあたりは事前に調べておいたほうがいいところです。渡航してから「見られなかった」と気づくと、家の中の時間の設計がまるごと崩れます。
▶ 【上海歴20年が比較】海外駐在 動画配信おすすめ5選|Netflix・Amazon・ABEMA・U-NEXT・WOWOW【2026年版】
⑤-3 外に出られない日を、先に想定しておく
この段取りでお伝えしたいのは、サービス選びそのものよりも考える順番のほうです。
外に出る予定(友人・習い事)だけを整えると、雨の日や体調を崩した日に、いきなり何も無い一日が現れます。夫は今日も帰ってこない、外にも出られない、やることも決まっていない——この組み合わせがいちばんこたえます。
だから、外に出られない日の過ごし方を、あらかじめ1つか2つ決めておく。見たい番組のリストでも、家でできる趣味でも構いません。「今日は外に出られないから、これをやる日にしよう」と言えるものが手元にあるだけで、その一日の意味が変わります。
この章の持ち帰り
・上海には、雨・暑さ・寒さ・お子さんの体調で外に出られない日がどうしても出てきます
・当時は日本の番組が見られず、録画やDVDを送ってもらっていました
・いまは家で見られます。ただし海外での扱いはサービスごとに違うので、渡航前に確かめておくのがおすすめです
・大事なのは「外に出られない日にやること」を先に決めておくことです
⑥ 段取り4|子どもの時間を埋める
⑥-1 上海は、子どもの習い事の選択肢が多い街です
4つ目は、お子さんの時間です。
学校が終わったあとの時間、それに週末。夫が不在の家庭では、この時間を埋めるのはほぼ帯同ご家族の役割になります。ここが埋まっていないと、平日の夕方も週末も、ずっと「今日は何をしよう」から始まることになります。
先に安心していただきたいのですが、上海は子どもの習い事の選択肢が多い街です。わが家の子どもたちがやっていたものを並べると、こんな具合でした。
子どもたちがやっていたもの
・英語
・中国語
・サッカー教室
・水泳
・ピアノ
・体操
・ダンス
・野球
日本人の子ども向けの教室が一通りそろっていますし、日本人学校や日本人が多く住む地区の周りに集まっているので、送り迎えの負担が比較的軽いのもありがたいところでした。「海外だから習い事の選択肢が減る」という心配は、上海に関してはあまり要らないと思います。
⚠️ ただし、あれもこれもと入れると、送り迎えをする側の予定が先に埋まります。入れるのは「子どもがやりたいもの」と「親が連れて行ける曜日」の重なるところまで。ここは正直、わが家も何度か詰め込みすぎて調整しました。
⑥-2 「外の時間」と「家の中の時間」を分けて考える
お子さんの時間は、2つに分けて考えると組み立てやすくなります。
外の時間=習い事・学校の行事・友達と遊ぶ時間。/家の中の時間=勉強・家で過ごす時間。
外の時間は、上に書いたとおり上海には選択肢があります。難しいのは家の中の時間のほうです。とくに、日本の勉強をどう続けるかという問題が出てきます。日本に帰ってからのことを考えると、ここを放っておくわけにはいきません。
⑥-3 家の中の選択肢は、この20年でいちばん変わりました
ここも、当時といまではまったく状況が違います。
わが家の子どもたちが小さかったころ、家でできることは限られていました。日本から教材を送ってもらうか、上海にある教室に通うか。そのどちらかです。
いまはオンラインで受けられるものが増えました。英会話も、日本の通信教育も、上海の自宅から続けられます。夫が不在の平日の夜に、子どもが自分の時間を持てる——これは当時のわが家には無かった選択肢です。
ただし、これも動画配信と同じで「海外から使えるかどうか」は、サービスごとに条件が違います。日本国内の住所が必要なもの、専用の端末が届かないもの、通話に使うアプリが上海だと不安定なもの。始めてから気づくと、いちばん困るのはお子さんです。
▶ 上海で子どものオンライン英会話|GFW・時差・決済の3軸で選ぶ【2026】
この章の持ち帰り
・上海は子どもの習い事の選択肢が多く、送り迎えの負担も比較的軽い街です
・入れすぎると、連れて行く側の予定が先に埋まります。曜日から逆算して決めるのがおすすめです
・お子さんの時間は「外の時間」と「家の中の時間」に分けて考えると組み立てやすくなります
・家の中の選択肢はこの20年で大きく増えました。ただし海外から使えるかは事前確認が必要です
⑦ 段取り5|買い出しと一時帰国の段取り
⑦-1 一時帰国は国慶節と春節の年2回。会社負担は一般的に年1回
最後の段取りは、一時帰国です。年に2回しかない話ですが、毎回いちばん体力を使うのがここでした。
わが家が帰国していたのは、国慶節(コッケイセツ/Guóqìngjié・10月)と春節(シュンセツ/Chūnjié・1〜2月)の年2回です。中国の長期休暇に合わせる形で、上海に住む日本人のご家庭ではよくあるパターンだと思います。
ここで、お金の話を1つだけ書いておきます。
一時帰国の実際
・帰国のタイミングは中国の長期休暇(国慶節・春節)に合わせるのが一般的です
・会社が負担してくれるのは、一般的に年1回です(会社の規定によります)
・つまり年2回帰るなら、2回目は自己負担になる前提で年間の予算を組んでおくのが安全です
・長期休暇は航空券が高くなる時期でもあります。早めの手配が効きます
「一時帰国は会社が出してくれるから大丈夫」と思っていると、2回目で計算が合わなくなります。ここは赴任前に、ご自身の会社の規定を確認しておいてください。
⑦-2 買っていたのは「乳幼児の消耗品ぜんぶ」でした
一時帰国のもう1つの役割が、買い出しです。
わが家の子どもたちが小さかったころ、いちばん困ったのが離乳食でした。上海で手に入るものもありましたが、種類も量も日本と同じようにはいきません。結局どうしていたかというと、一時帰国のときに大量に買って持ち帰る、という力技でした。
離乳食だけではありません。
当時、まとめて買っていたもの
・離乳食・ベビーフード
・お菓子・おやつ
・おむつ
・そのほか、乳幼児と小さな子どもが使う消耗品はほぼ全部
つまり「日本で買うほうが安心なもの」を、半年分まとめて運んでいたということです。スーツケースの中身は、ほとんど子ども用品でした。
いまは上海で買えるものもずいぶん増えましたし、買い方も変わりました。それでも「日本で買っておきたいもの」は、ご家庭ごとに必ず残ります。定番と段取りはこちらにまとめています。
▶ 中国駐在の一時帰国 買い出しリスト【2026】上海歴20年の定番と段取り術
⑦-3 いちばん大変なのは子どもより荷物、そして遅延の待ち時間
そして、その荷物を運ぶ移動そのものの話です。
わが家は小さな子ども2人を連れて、母親が飛行機で往復していました。私が一緒に行けない回もありました。
「子ども2人を連れた移動が大変」と言うと、たいていは子どもの世話のことだと思われます。でも実際にいちばんこたえたのは、子ども以外の荷物でした。買い出しで増えた荷物を抱えて、子どもの手も引いて、チェックインをして、保安検査を通る。手が足りません。
もう1つが、遅延の待ち時間です。
中国発着の便は、遅延がそれなりに起こります。しかも、いつ動くのかがはっきりしないまま空港で待つことになります。大人だけなら本を読んで待てばいい時間ですが、小さな子どもを2人連れて、荷物を抱えたまま何時間も待つのは、まったく別の話です。
ここは、うまい解決策があるわけではありません。ただ、遅延は起きるものとして予定を組む——帰国初日に予定を入れない、迎えを頼むなら余裕を持った時間にする、待ち時間に子どもが過ごせるものを手荷物に入れておく。これだけでも、当日の消耗はだいぶ変わります。
⑦-4 いま思うこと|量より質
最後に、5つの段取りとは少し違う話を書かせてください。
わが家は、下の子を、まだ小さいうちに日本へ戻しました。上の子より、上海で一緒に過ごした時間は短くなりました。寂しい思いをさせたと思いますし、いまでも少し後悔しています。
ただ、こうも思っています。一緒にいた時間の長さと、家族の関係の深さは、必ずしも同じではないのかもしれません。
これは断言できることではありません。「大丈夫ですよ」と言えるほどの根拠を、私は持っていません。それでも、同じことで自分を責めている方がいたら——量が足りなかったと責め続ける必要は、たぶん無いのだと思います。少なくとも私は、そう思うようにしています。

5つの段取りは、突きつめると「家族が上海で自分の時間を持てるようにする」ための話です。夫がいないぶんを埋めるためではなくて、家族それぞれの時間をちゃんと作るため。そう考えると、少し気が楽になりませんか😊
この記事の持ち帰り|夫が不在でも回る5つの段取り
・段取り1 友人をつくる 来たばかりの時期に。輪ができる前に入る
・段取り2 習い事を始める 語学に限らない。予定がこちら側で先に決まるのが効く
・段取り3 家の中の時間の質を上げる 外に出られない日にやることを先に決めておく
・段取り4 子どもの時間を埋める 外の時間と家の中の時間を分けて考える
・段取り5 買い出しと一時帰国の段取り 会社負担は年1回が一般的。遅延は起きる前提で組む
⑧ よくある質問(FAQ)
- Q夫が不在がちなら、帯同より単身赴任のほうがいいのでしょうか?
- A
これは各ご家庭で答えが違うところなので、私が「こうすべき」とは言えません。ただ、判断の軸を1つだけお伝えするとすれば——「夫の不在がどれくらいか」ではなく「帯同したご家族が現地で自分の予定を持てそうか」で考えるほうが、決めやすいと思います。夫の不在は会社の事情で決まるので、こちらで動かせません。動かせるのは後者のほうです。わが家は帯同を選びましたし、その判断自体は後悔していません。
- Q中国語がまったく話せませんが、友人はできますか?
- A
できます。上海の日本人コミュニティは日本語で完結しますので、友人づくりに中国語は必要ありません。中国語が効いてくるのは、買い物やタクシー、病院といった生活の場面のほうです。この2つは別のものだと考えてください。「中国語ができないから人に会うのが不安」という順番で止まってしまうのが、いちばんもったいないところです。
- Q習い事は何から始めるのがいいですか?
- A
迷われたら、送り迎えや移動の負担が少ないものから選んでみてください。家から近い、または自宅でできるものです。最初にハードルの高いものを選ぶと、行けない日が続いたときにそのまま止まってしまいます。逆に「行くのが簡単なもの」を1つ続けられると、次の1つを足すのが楽になります。内容よりも続く形かどうかを先に見るのがおすすめです。
- Q一時帰国の航空券は、会社が全部出してくれるのですか?
- A
会社の規定によりますが、一般的には年1回のぶんが会社負担です。年2回帰るご家庭では、2回目は自己負担になる前提で考えておくほうが安全です。あわせて、ご家族が何名ぶんまで対象かも規定によって違います。ここは赴任前に総務へ確認しておくと、あとの計画が立てやすくなります。
- Q赴任してもう半年経ちました。いまからでも間に合いますか?
- A
間に合います。「最初の3ヶ月」は動きやすい時期という意味であって、そこを過ぎたら手遅れ、ということではありません。それに、人の入れ替わりは1月と4月に年2回来ます。新しく来た方が入ってくるタイミングは、これから何度もあります。その波に合わせて、習い事でも学校の行事でも、週に1回の予定を1つ作るところから始めてみてください。
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